Twitterでしばしば見かける意見で
「”推し”には売れて欲しくない」
というものがある。
一般的に考えれば矛盾していておかしな話なんだが、心情的にはわからなくもない。
ちょっと俺なりに考察してみる。
わかりやすく「売れる」という言葉を使っているが、ここでの定義は「より多くの人に知ってもらってファンが増える」ということにしておく。
また、アイドルでもバンドでもSSWでも一括りで言及する場合は、「アーティスト」または「演者」と表記することにする。
そこには文脈的には、運営も含まれていると言ってもいいかもしれない。
(書きかけなので随時追記します)
大前提として
まず、俺個人の意見としては、とにかく好きなアーティストには「売れて欲しい」と思っている。
文字通り、そのアーティストをまだ見ぬ誰かに”推し”たいのだ。
小規模であればあるほどその傾向は強くなるが…。
東京ドームでライブをするようなバンドでも、売れて欲しいことに変わりはない。
上限にも近い規模なので、拡大というよりは続いて欲しいというのに近いかもしれない。
続くためには売れていないといけないので、やはりそれも売れて欲しいという言葉に当てはまる。
そう考えると…。
そもそも言葉の意味として「推し」に「売れて欲しくない」というのはかなり矛盾していると思う。
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また、この話題に触れるにあたって…。
「そのアーティスト自身が売れたいと思っている」
という大前提も必要だ。
そもそも売れたいと思ってない人に対して「売れて欲しい」と思うことも余計なお世話である。
だから「売れたいと思っている推しアーティストに対して、ファンが売れて欲しくないと思うこと」というのがこの記事のテーマとなる。
その上で、売れて欲しくないと思う人はなぜなのか、という考察を進めていく。
心理的・物理的な距離が遠くなることへの寂しさ
推しに対して売れて欲しくないと思う、根本的な要因は「距離が遠くなる寂しさ」が多いと思われる。
それは心理的な距離でもあり物理的な距離でもある。
SNSなどで絡めなくなる
今や、SNSや配信アプリの活用は、死活問題と言える。
規模の小さいアーティストであればより顕著で、ファンもそこで絡んだり認知されたりすることに楽しさを見出している場合がある。
もちろんファンが増えれば増えるほどその頻度は低くなる。
だから、売れて欲しくないと思うのは、極めて自然な心理かもしれない。
アイドルファンにありがちな現象のようにも思う。
だが、よく考えてみて欲しい。
SNSや配信は、既存ファンを維持するためのファンサ、という側面は確かにあるだろう。
しかし、その本質は、そもそもファンを増やすため、売れるためにやっていることなのだ。
そこで過度なサービスを求めるのはおかしな話で、それが無料なら尚更だ。
既存ファンは、シェアなり投げ銭なりして盛り上げるのが正しい気がする。
会場が大きくなる
ファンが増えれば会場が大きくなる。
すると単純に、ライブが観づらい、ということになる。
前で観るためにはチケット争奪戦に勝たねばならない。
それで前のポジションが取れたとしても、ステージが広すぎて全体が見えない、などの問題も生じる。
かと言って人気に反して、小さな会場でやっていたらそもそもチケットが取れない。
これはなかなか由々しき問題である。
メジャーの売り方への拒否感
わかりやすくメジャーと書いたが、規模の大きなインディーズであってもほぼ同じだ。
そもそも「売れる=多くの人に好かれる」ためには、一般的に受ける音楽やパフォーマンスである必要がある。
極端な話をすると、ライブで全裸になるようなバンドが売れるとは思えない。
(レッチリなどの例はあるがそこの理屈は後述する)
つまり、売れるためにはある程度の制約が伴うが場合があるのだ。
そこに対する拒否感があるというのはわからないでもない。
音楽性やパフォーマンスがつまらなくなる
これはわかりやすい例だ。
小さなライブハウスでやっているときは個性的で非常に尖った音楽性で、それで好きになった。
しかし、人気が出るにつれてそれが他と変わらない一般的なものになってしまった。
というような話は山ほどある。
そもそも有象無象がひしめく音楽業界においては、まずは目立たないといけない。
そのためには多少無理をしてでも個性を出す必要がある。
その他のサービスレベルが低下する
理論上は尖っていても売れる
「売れて欲しくない」と思ってしまったら…
上記の理由から、売れて欲しくないと思う人がいるんだろうな、というのはまぁ理解できなくもない。
「小規模だから好き」というのもわかるので、それならそれで楽しみようはいくらでもある。
どう思っていようが個人の勝手である。
ただ、それがアーティスト本人の意向に反する場合は、以下の対応が望ましいと思う。
・アーティストに対して「売れて欲しくない」と言わない
・他のファンの邪魔をしない
・そのアーティストの現場からは離れる
このあたりの対応が平和なんだろうな、と思う。
アーティストに対して思うこと
今までグダグダと書いてきたが、これは何もファンだけの問題ではない。
アーティストとしても気をつけないといけないことはあると思っている。
あくまでも可能性のひとつとして考えていただきたいし、ファンとしてもちょっと意識した方が良いことかもしれない。
それは…。
「売れたいと思っていても、売れたらできなくなるサービスを提供している」
という可能性がある点だ。
それは自ら上限を設ける行為、すなわち自ら売れることを拒む行為のようにも思う。
売れたときやファンが増えたときにサービスの質が低下したら、そこを目当てにしてついたファンは離れても仕方がない。
極端な例だと、ファンが1人の時と5人の時で同じクオリティのサービスが提供できなければ、その1人のファンは離れる可能性がある、ということだ。
それを回避するために考えられるのは、
・売れたら質が落ちるサービスはなるべく排除する
・売れてもサービスが提供できるようにシステムや人員などを準備しておく(ほぼ先行投資になると思われる)
そんなところだろうか。
望ましいのは後者である。
俺は当事者ではないので、あくまでも机上の空論ではあるが…。
こんなに良い曲を作っていてこんなに良いライブをしているのになぜファンが増えないんだろう、という疑問に対する回答のひとつが、なんとなくここにある気はしている。
(そもそも広報活動に問題があることの方が多いと思うけど)
ファンが定着せずに新規獲得と離脱を繰り返している場合は、この「自ら上限を設けている」可能性を疑っても良いのかもしれない。
俺は、売れても質が落ちない(落ちにくい)サービスこそ重要だと思っている。
その不変的かつ普遍的なサービスというのはやはり音源やライブだ。
しかし、それを阻害するようなサービスやシステムも少なからず存在している。
俺が推したいアーティストというのは、総合的に考えたときに、永続性や発展性を感じるアーティストである。
少なくとも俺の主観でそこに合致しなければ、推す理由がないのだ。
アーティストというのは職業である以上、稼がなければ意味がないし、稼ぐことこそ成功だ。
それが「太く短く狭く」なのか、「細く長く広く」なのかという違いなのかもしれない。
まとめ
「推し活」に理想論はあれど、一般論としての正解があるとは言えない。
俺が個人的に批判しているのもまた、誰かにとっての正解である。
人が集まれば、当然のようにいろんな考え方が集まる。
だから「売れて欲しくない」と思う人が出てくるのも自然なことなのだ。
それに対していちいち異を唱えるような俺の考え方こそ矛盾しているのかもしれない。
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